IT業界の営業職への転職を検討する際に、下記のような悩みを持っている方はいませんか?
- これから面接を受ける企業の業界ポジションや実態(元請けか下請けか?)を知りたい
- 元請け比率を調べる際に、企業サイトのどこを見ればよいかわからない
実は、企業サイトの主要取引先をみることで、対象企業が元請けかし下請けかを、概ね把握することができるのです。
なぜなら、IT業界における下請け会社は、一般事業会社と直接の契約取引することが少なく、主要取引先に事業会社を記載することができないためです。
この記事では、主要取引先の調査方法に加え、ノーリスクかつ短時間で、企業の業界ポジション(元請け/下請け)を理解するためのノウハウを3点お伝えします。
【ステータス(略歴)】
独立系SIerに新卒で入社し3年間従事|大手SIerに転職後、業界の構造や顧客への振る舞い方などの経験を積む|ソフトウェア・パッケージ開発メーカーに転職するも2年間実績を出せず凹む|Giverの精神を忘れずスキルアップを図り、トップセールスへのし上がる|広報/直販営業/代理店営業を経験|新規サービスの営業企画リーダーを努め、日々邁進中
【熟練度(職務経験)】
直販営業の熟練度:
代理店営業の熟練度:
広報・プロモーションの熟練度:
商品企画の熟練度:
本記事を読むと、元請けかと思って転職した企業が下請けで、思っていた営業ができず「こんなはずじゃなかった―!!」というリスクを減らすことができますよ。
- 企業サイトをみるだけわかる元請け・下請けの調査・分析ノウハウ
- 面接官の心象を下げない、元請け比率の聞き方
それでは、本題に入っていきましょう!
商品/サービス提供者や元請けSIerは最終顧客の価値提供しやすい
IT業界は大きく5つのジャンルに分かれています。また、各ジャンルごとに多重のピラミッド構造になっており、各社がおかれている業界ポジションにより生業が異なるため、営業アプローチ先や提案商材が大きく変わってくるのです。
13年、IT業界に従事し、様々なIT企業を見てきた私の価値観として、IT業界で営業をするならば、
- 商品/サービス提供者
- 元請けSIer
の2択と考えます。
なぜなら、最終顧客の価値提供を提案しやすいポジションであるためです。
具体的には、
- 商品/サービス提供者:最終顧客や代理店に対して、自社商材を活用することで得られる価値を提案する
- 元請けSIer:市場の製品・サービスや自社の技術力を組み合わせたソリューションを用ることで得られる、最終顧客の価値を提案する
などが挙げられます。
やりがいを得やすいほか、待遇やスキルアップにつながりやすいのもメリットです。
詳細は別記事で解説しています。
お客様と直接関わると、ものすごく大変そうなイメージがあるのですが・・・・。
確かに大変なシーンも多いですね。
でも、お客様から「御社の製品を採用してよかった!!」という声をいただいたときには、言語化できない嬉しさがありますよ!
企業サイトをみるだけわかる元請け・下請けの調査・分析ノウハウ
サービス提供者や元請けSIerのほうがやりがいのある営業ができそうなことはなんとなくわかりました。
でも、入社前に元請けや下請けをどのように判断するんですか?
勤務している社員や採用担当者に「ぶっちゃけ、下請け比率はどれくらい?」と聞いてみることが、その企業のリアルを知る一番に近道です。
でも、採用結果に響きそうで、採用担当者に「御社の元請け比率を教えてください」とは聞きづらいですよね。
確かに!
採用結果に響きそうで、採用担当に思い切った質問ってしづらいんですよね・・・。
そこで、企業サイトをみるだけわかる、IT業界の元請け/下請けを見分けるノウハウを紹介します。
主要取引先を見る
はじめに紹介するノウハウは、企業サイトに記載されている「主要取引先」欄を確認する方法です。
下記について、具体的に説明していきましょう。
効率的な『主要取引先欄』へのたどり着き方
主要取引先欄を探すのが面倒なんですけど・・・。
全ての企業サイトが同じ作りになっていないため、慣れないと探すのが大変だったりしますよね。
企業サイトによっては「サイト内検索」が用意されています。
サイト内検索がある場合、検索ウインドで “主要取引先” と検索してみましょう。
完全一致型の検索ができないケースもありますので ”主要”、”取引先” と区切って検索すると良いですね。
「サイト内検索」がない場合は、下記のSTEPで探すことで、効率的に「主要取引先欄」にたどり着くことができますよ。
企業サイトによっては「企業概要」や「Profile」など、様々な表現があるため注意が必要
iPhone+Safariの場合は「ページを検索」で文字検索できます!
主要取引先から仮定できる情報
主要取引先欄は見つかりました!でも、具体的にどのような調査をすれば、元請けか下請けかの判断ができるんですか?
取引している企業が、IT業界の会社か事業会社かで、概ねの傾向はわかりますよ。
リスクがない調査方法ではあるものの、慣れないうちは検索の手間がかかる点はデメリットと言えるでしょう。
記載されている企業が
- ITサービス業(元請け)
- ソフトウェア/ハードウェア/通信/サービス事業者
がほとんどだった場合、上記企業の下請けでシステム開発を行っている会社であることが判断できます。
- 元請けの可能性が高い:主要取引先欄のほとんどが「事業会社」になっている
- 二次請けの可能性が高い:主要取引先が「ITサービス業(元請け)」と「事業会社」とで半々
- 3次請け以下の可能性が高い:主要取引先は「ITサービス業(二次請け)」が大半
少しわかりづらいため、図解を見ながら解説しますね。
例えば、B社企業サイトの『主要取引先欄』を見たとしましょう。A社のような事業会社が羅列されていれば、「A社は事業会社と直接取引を多く行っている元請け気質のSIer」と判断できます。
一方、C社・D社の企業サイトの『主要取引先欄』をみると、『B社』のような元請けSIerが多くを占めているケースがあります。このような場合、「C社やD社は、二次請けをメインのSIer」と仮説を立てることができます。
主要取引先欄の企業名をみるだけで、「ITサービス業」か「事業会社」かを切り分けるのって大変じゃないですか?
よくわかります!
私も、社名でIT業界に属しているかどうかの勘所をつけるまでに、数年単位でかかりました。
IT業界に精通している方であれば、企業名を見れるだけで、「ITサービス業」か「事業会社」かの判断ができるようになります。
慣れないうちは、
- ~システム/システムズ
- ~データ
- ~ソリューション/ソリューションズ
- ~情報
といった企業名の多くは、IT業界に属していますんで、おおよその調査として参考にいただくとよいでしょう。
詳細に調査したい場合には、主要取引先の企業名を再検索し、IT業界の会社かどうかを調査しましょう。
主要取引先が事業会社の場合でも元請けSIerとは限らない
主要取引先が “事業会社” か “ITサービス業” をみていけば、企業の業界ポジションが理解できそうですね!
仮定することができますが、断定はできません。
業界特有の「あるある」が存在するのです。
エッ!?どういうことですか?
例えば、主要主要取引先が “Webサービス” や “オンラインサービス” を提供している事業者の場合は、注意が必要です。
なぜなら、Web/オンラインサービスの運用・保守を生業にしているSIerである可能性があるためです。
図解を用いて補足しましょう。
あなたは、上記図解のC社を調査しているとしましょう。C社サイトの主要取引先に、著名なオンラインサービスを提供しているAが記載されていました。しかし、IT業界では、下記のような過程があったりします。
- 事業会社A社は、B社に新たなオンラインサービスのシステム開発を委託した
- システム開発時は、元請けB社の下に、二次請けのC社が参画(この時点で、A社・C社の取引関係はない)
- システム開発工程を経て、運用・保守工程に入る
- B社は商流から外れ、A社とC社が、運用・保守契約を直接締結(この時点で、A社・C社は取引関係が成り立つ
実は、A社のオンラインサービスシステムを元請けで担ったのは別会社で、C社はシステムが完成した後の運用・保守を任されたわけです。
運用・保守とは、サービス利用者に対して安定的にサービスを提供し続ける役割となります。
夜間や祝祭日のシステムトラブルが生じてしまった場合は、技術者が緊急対応しなければならないケースがあり、労働環境が過酷だったりするわけです。(発注企業先との契約内容による)
僕たちが日々なにげなく使っているオンラインサービスは、サービス提供者の後ろで支えているC社のような企業のおかげで成り立っているわけですね!
決算説明資料を見てみる
2つ目に紹介するノウハウは、上場企業の場合、株主向けに情報発信している『決算説明資料』を確認する方法です。
主要取引先は、企業ホームページによっては掲載されていない可能性がありますし、上述した『IT業界あるある』を念頭に置いておく必要があります。
上場企業限定ではありますが、『決算説明資料』に目を通すことで、対象企業の業界ポジションを確認することができます。
決算説明資料へのたどり着き方
IR情報って今まであまり見てこなかったんですよね・・・
わかります!決算短信や有価証券報告書って、見ていると眠くなりますよね・・・。
面接候補の企業の下調べを目的にするのであれば、決算説明資料が分かりやすいでしょう。
決算短信や有価証券報告書とは異なり、決算説明会資料は、決算の結果や事業状況のサマリ、中長期的な経営計画に向けた現状のプロセスなどが、投資家にわかりやすいようにパワーポイント形式でまとめられています。
取引先一覧で得られなかった情報を得るには良い資料です。
企業サイト内に掲載されている、決算説明資料へのたどり着き方の手順をまとめておきますね。
ほとんどの上場企業サイトには、TOPページのメニュから選択ができるようになっている
企業によっては、『決算説明資料』『決算説明会資料』『決算説明プレゼン資料』など様々な表現で掲載されている
最新かつ通年の決算説明資料を確認
決算説明資料は、四半期ごとか半期ごとに掲載されている
決算説明資料を効率的に見る方法
1社1社、決算説明資料のすべてに目を通すのって面倒じゃないですか?
確かに!面接する会社が2桁になってくると、1社1社の決算説明資料すべてに目を通すって、結構労力がかかりますよね!
そこで、”IT企業が元請けか下請けかを判断するため” という観点で、決算説明資料を効率的に見るポイントをお伝えします。
ズバリ、決算説明資料を開いた状態で、下記のキーワードで該当する箇所を検索してみましょう!
- 元請け・下請け
- プライム・アンダー
- 上流・下流
数十ページにもなる決算説明資料から、元請け/下請けを判断する上で重要なキーワードで参照することで、必要な情報を効率的に探すことができます。
- IT業界用語で、元請けをプライム、下請けをアンダーと呼ぶ
- システム開発工程において、元請け(プライム)が担うことが多い要件定義や設計といった工程を上流工程、下請け(アンダー)が担うことが多い開発・試験を下流工程と呼ぶ
この方法を使えば、何社もの決算資料を読み込まなくてよいので楽そうですね!
決算説明資料を見ておくと面接でも活用できる
ここまでで、元請け/下請けを判断するテクニックを解説しました。
さらに、決算説明資料にあらかじめ目を通しておく+トークスクリプトを用意しておくことで、面接時に元請け比率を確認しやすかったりします。
えっ、どういうことですか!?
トークスクリプト例と、面接企業側の心理を用いながら説明しましょう。
システム開発における御社の元請け比率はどのくらいでしょうか?
元請け比率について、上記のような聞き方をしてしまうと、面接官に与える印象は最悪です。
採用する立場から見ると、「そんなこと決算説明資料に載せているのに、こいつ事前の情報収集もできないのか・・・。」と思ってしまいますよね?
そうですよ!!やっぱり面接官に元請け比率を聞くのは怖いですッ!!
では、下記の雛形でで元請け比率を聞いてみたときの印象はどうでしょうか?
システム開発における御社の元請け比率について説明させてください。
御社の決算説明資料を拝見し、現状の元請け比率が50%で、3年後には75%にしたいという計画であると理解しています。
この25%のGAPを、どのように埋めていくかの方向性を教えてください。
なお、私は営業として、自社の商品/サービスを活用し、顧客へ価値提供を行えるような仕事をしたく、私が貴社の元請け比率向上に向けた一助になりたく考えています。
ただ単に元請け比率の質問をするよりも圧倒的に好印象なはずです。
なるほど!!元請け比率の実態を聞けて、かつ面接で好印象を与えられれば、一石二鳥ですね!
技術者の募集要項を見る
最後に紹介するノウハウは、対象企業の技術者(エンジニア)の募集要項を見ることです。
下記のような記載がないかを確認しましょう。
- 未経験者歓迎
- 客先常駐
- SESエンジニア募集
1つでも記載のあった場合、その企業は下請けの可能性が高いです。
えっ!?何でですか?未経験者も受け入れてくれる、良い企業という印象を受けますけど・・・。
良い/悪い企業の指標ではなく、あくまで元請け/下請けのSIerを判断するノウハウという観点で見てください。
あらゆる企業に、ITに関する雑務は存在します。
雑務対応に際する、企業側の本音(需要)は、下記のようになっています。
- 雑務専属社員を配置するとモチベーション低下の結果、退職につながるし、人件費もかかる
- 雑務の作業は、ある程度のITリテラシがあれば誰でもできる作業がほとんど→未経験者歓迎
- 雑務は年末調整前後や決算期が多いので、繁忙期に合わせてエンジニア派遣したいな!→SESエンジニア
- 技術要員の派遣を行っている企業に外注しよう!→客先常駐
この圧倒的な市場需要に対して応えているのが、客先常駐型エンジニアを多く抱える下請けSIerです。
そのため、エンジニアの募集要項に、”未経験者歓迎” 、”SESエンジニア” 、”客先常駐” というキーワードが入っている企業は、客先に下請け企業と断定できるのです。
僕は営業志望なのでエンジニアの募集要項は全く見ていませんでしたが、このノウハウは使えそうだな!!
なお、企業からすると、客先常駐型エンジニアは、
- 社員を雇うよりも費用が安い
- 外注のため、スキルアップやモチベーションを意識する必要がない
など、なにかと都合が良いわけです。
客先派遣を目的に採用されたエンジニアは、
- 給与水準も低い
- 業務のメインが単純作業や雑務であることからスキルアップも見込ない
など、ブラックな職務環境になりやすいく、営業部門の待遇も連動してきます。
IT業界×営業がブラックと言われる所以は、このような要素が切り取られてシェアされているからかもしれませんね。
まとめ 企業サイトや募集要項を正しく分析し業界ポジションを理解しよう
本記事では、多重なピラミッド構造で成り立つIT業界における、各企業のポジション(元請け/下請け/SES)をインターネット1つで分析する方法を3つお伝えしてきました。
いずれも、費用・登録不要(ノーリスク)で実施可能です。
IT業界の企業へ入社後、「こんなはずじゃなかった!!私がやりたかった営業はこんなことじゃない!!」とならないよう、企業調査は入念に行う必要があります。本記事で紹介したノウハウは確実するようにしましょう。
補足)IT業界に特化した転職エージェントに相談するのもあり
IT業界が分からず、第三者の意見も聞きたい、ということであれば、IT業界に特化した転職エージェントに相談してみることもオススメです。ただし、独特の業界文化があるので、IT業界に特化しサービスやエージェントでないと、的外れなアドバイスになりかねません。
参考までに、IT業界に特化した転職サービスのリンク貼っておきます。
- IT企業への転職なら、IT求人ナビ :IT業界特化の転職支援サービス
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